1964年、東京オリンピックに貢献したティアックの映像技術
1964年、アジアで初めて開催された東京オリンピック。このオリンピックは海外への衛星中継、カラー放送、マラソン全コース完全中継等の最新映像技術が目白押しで、爆発的にテレビが普及したきっかけにもなり、「テレビ・オリンピック」とも評されました。この東京オリンピックでティアックは、映像技術に大きく貢献していたことを御ご存知でしょうか。それは世界初のスローモーションVTRです。当時NHK放送技術研究所から依頼され、NHKの開発に大いに協力しました。
当時、開発プロジェクトリーダーを担ったティアックOBの岩沢氏はこの様に語っています。
1962年7月にスローモーションVTRの開発についてオリンピック放送本部から強い要請があり、技研(NHK放送技術研究所)内では、記録技術特別研究室と開発部が競って方式の提案を始めました。当時私が所属していた記録技術特研はメカニズムの可能性、見通しをティアックの協力を受けながらまとめていき、試作機案をまとめました。半年間の討議の成果です。良いモノをつくれば、放送に、それもオリンピック放送に実用されるということの期待感は高かった。ティアックの谷社長が「なにしろ日の丸には弱いからなー・・・」の一言でティアック社内の特機部が直ぐに取り組んでくれたのです。
開発での苦労を、岩沢氏はこう語っています。
試作機の安定動作には苦労しました。トランジスターと真空管の混在機であるために発熱、電源電圧変動、温湿度、チリ、機械振動、誤操作などに色々と苦労しました。またモーターを安定した状態で回転させるサーボ方式の確立も難しかった。その技術は新幹線の速さで磁気ヘッドを走らせながら、通過時刻の揺らぎを0.1マイクロ秒の精度でモーターを回転させるものでした。
また特に印象に残った出来事として以下のように語っています。
1963年の東 京国際スポーツ大会(プレオリンピック)の放送時、女子ハードルでなんと日本の選手が決勝で1着になったのです。そのシーンをスローモーションVTRの練習のつもりで撮影し、スローモーション映像をオンエア調整室に映し出していたところ、これを見ていたプログラムディレクターから「これはすごい!これを直ぐに放送する」と連絡電話で指示があり、いきなりオンエアとなったのです。とても印象的な出来事でした。多くの方々が、アスリートたちの躍動を伝えるスローモーション映像を待ち望んでいることを改めて実感しました。
技術の継承
このスローモーションVTR技術は進歩し続け、今ではスポーツに限らず様々な映像分野で活躍しています。ティアックではこの技術を、医用画像を録画するビデオレコーダーや、振動・圧力・電気・画像等の信号を記録するデータレコーダー、旅客機の機内エンターテイメント用ビデオプレーヤーなどに継承し、産業分野に貢献し続けています。